ストレスとプラーナーヤーマ
呼吸にかかわる身体機能の話
呼吸法が健康やストレスケアに良い !
私もそう思っています。とても実感しています。
長年、そう思ってヨーガを続けている、ヨーガ愛好者の一人です。
ではそれは、本当なのか?ヨーガではどんな作用が起こっているのか?
身体機能の話です。
呼吸は、”延髄”の呼吸中枢によって制御されています。この働きにより、自然な呼吸がリズミカルに働いています。
また”橋”は、持続性呼吸中枢で、激しい運動やストレスを受けた時に働きます。
心拍数、代謝率が高まり、酸素を多く必要とした時に、呼吸の速度を上げて、酸素をより多く取り入れてくれます。
そのように私たちの身体は、状況に応じて〝呼吸の速度〟を調整してくれています。
自分の呼吸のスピード(呼吸が早くなっている、ゆっくりとしている)は、意識すれば、自覚することができます。
激しい運動をしていないのに、呼吸のスピードが変化しているとき(速い、荒い、不安定、乱れているetc)があります。それは【感情】【自律神経/生理機能の状態】が、呼吸に影響しています。
感情を司るのは「大脳辺縁系」。
ストレス、恐怖、パニックなどで、中枢が興奮すると、、、、
視床下部が脳下垂体を刺激!!
脳下垂体が副腎を刺激!!
副腎からアドレナリン分泌!!
全身の働きは活性化!!
(※これは人間が危険を乗り越えるときに起こる身体の反応で、生きるために必要不可欠な機能と言われる。しかし、この状態が不必要に長く持続すると、心身の健康に支障がでる)
これによって、自然なリズミカルな呼吸は、乱れていきます。
「プラーナーヤーマとは」
ヨーガでは「プラーナーヤーマ/Pranayama」が、呼吸に関連した技法です。簡単に呼吸法と呼ぶことがありますが、実はもっと深淵な意味を持っています。
●言葉の意味
– プラーナ=生命エネルギー、1サイクルの呼吸
– アーヤーマ=拡張、引き伸ばす
よって、プラーナーヤーマとは
【生命エネルギーを引き伸ばすばすために呼吸を引き伸ばす】ということ。
プラーナとは、中国で言う「気」のようなものと言われてます。
息がプラーナ。そのプラーナを引き延ばす。
・1回ずつの呼吸(呼気吸気〜プラーナ)の長さを引き延ばす。
・1回ずつの呼吸を引き伸ばして、呼吸の回数を引き延ばす。
身体にそのプラーナを拡張していく、息を長くすることは、生命エネルギーを引き延ばすことになると、ハタヨーギーは発見したのです。
また、1回の呼吸のサイクルを、ゆっくりと引き伸ばしていくことは〝心作用を停止〟するためのプロセスでもあると、古典のヨーガ文献には記されています。
では、技法としてプラーナヤーマとはどんなことをするのでしょうか?
「プラーナーヤーマ/pranayama」は、呼吸を一定時間、規則的にコントロールするヨーガの技法です。
通常の自然呼吸とは異なる、呼吸活動です。
●通常の呼吸活動=不随意運動。
意識をしていなくても自律的に働いています。
(現に今私たちは意識をしなくとも呼吸は続いています)
●プラーナーヤーマの呼吸活動=随意運動。
自己の意識に基づく運動。
吸う、吐くの動作、速度、長さをコントロール。
(吸ってー吐いてーの時の呼吸活動)
実習では、いくつか方法がありますが、一般的に多く実践されているのは、ハタ・ヨーガの技法です。
一定の比率で、呼気吸気をコントロールします。
1:1、1:2など(上級は1:2:2:、1:4:2)
通常の呼吸回数が10~12回/1分間くらいとしたら、プラーナーヤーマを1:2 (5秒:10秒)で行うと6回以下/1分となります。
呼吸のスピードがゆっくりになると、生理機能の働きも変化します。心拍、血圧、代謝、呼吸に変化が起こり、呼吸の変化は感情にも影響します。
「呼吸と感情の関係」
代謝の促進/抑制は自律神経系の働きです。
交
感神経=促進
副交感神経=抑制
・イライラや興奮している時は交感神経優勢。
・リラックスして落ち着いている時は、副交感神経優勢。
どちらも必要な働きですが、その切替がうまくいかないと身体は消耗していきます。
呼吸と自律神経系の働きは、深く密接です。
【感情 ←→自律神経←→ 呼吸】
この3つは互いに関連しています。
また呼吸の活動は、脳の下位(延髄、橋)の呼吸中枢にて自動調整されています。
また、この呼吸中枢の働きは、感情を司る「大脳辺縁系」の影響も受けます。
急性のストレス反応では、この大脳辺縁系の興奮と関連づけられるので、いかにこの大脳辺縁系を抑制させられるかが、感情、代謝促進をの制御に繋がります。
感情が乱れた時は、とてもツラいものです。頭でわかっているけども、考えで感情で抑えたり、理性で感情を抑えることはなかなかできません。
「わかっているけど、、、!けど!!!」と思っていることと、行動が伴わないことがあり、それが通常です。
ではそれをどう対処するのか?改善させるのか?
怒りっぽい自分とどうしたら決別できるのか?
気持ちで気持ちを制することはできるのか?
大半の方にはとっても難しいことです。
そ・こ・で!
プラーナーヤーマの出番です。
不規則な呼吸、早い呼吸、これを一定時間、ゆっくりと呼気吸気をコントロール。
(上級になると保息も出てきます)
呼吸を通して自律神経系に働きかけます。
イライラ、ムカムカの感情と共に、早い呼吸スイッチオン(交感神経優勢)しますが、落ち着いてリラックスしているときのリズミカルで安定した呼吸の時は、身体機能(内臓活動、代謝)は休息が得られます。
(副交感神経優勢)
プラーナーヤーマ後、技法はとくに問わず、15~20分後には、副交感神経が活性化することがわかっています。それにより、昂った感情=交感神経の影響が解消していくのです。
最初は一時的な変化で1時間程しか持続しませんが、定期的な練習によって、効果は持続的、永続的になっていく、と推奨されています。
「ストレスケアとしてのプラーナーヤーマ」
日常生活のなかで「ストレスを受ける→身体機能が乱れる」
このサイクルがきても、プラーナーヤーマを定期的に練習をすることで、定着した副交感神経の働き、大脳辺縁系の抑制で、自分自身の身体反応をコントロールすることができるようになっていきます。
感情システム、大脳辺縁系は活性化せずにいることは、ストレス反応の予防措置になると言えます。
無駄な身体の活動は消耗しますが、穏やかな状態が身体に負担を与えず、休息をもたらします。
臓器は自然なリズムで働き、器官系同志の協調もうまくいくようになります。
代謝が正常に働くようにすることは、身体を守り、健康を維持/促進してくれます。
「感情を穏やかにしたい、怒りを減らしたい、ピースフルに生きたい」
ヨーガでは、このプラーナーヤーマを継続的に練習することが、感情を穏やかにし、自然な呼吸を安定させ、リズミカルにしてくれます。
アーサナは筋肉系統に働きかけますが、プラーナーヤーマは、自律神経系に働きかかけます。
どちらも身体の部分。構造的部分+生理機能的部分。両方整え、鍛えることが必要です。
自分の生理機能の働きを操作することで、ストレスに対処ができると、ヨーガは教えてくれます。
プラーナーヤーマは、続けるほどに自律神経系の調子が整っていきます。
実際、センターの会員様、出張クラスメンバー様も、継続的な練習で、その良さを感じ、効果も実感しておられます。
ポーズだけでは賄えない、アーサナでは満たせない部分があるのです。
それでもアーサナの練習に限定しているとしたら、それは五本指の靴下の2本くらいしか指が通っていないようなものです。
不調を感じていて、ヨーガに来てアーサナ(ポーズ)だけしていても、〝全然希望を感じない〟〝体調は良くならない〟と言う声をよく聞きます。
自律神経系のバランスを整えてゆくことで、過剰な緊張や、頑張りすぎの心持ち、不規則な呼吸、慢性疲労など、改善できることがあるのに、「ヨーガ=ポーズ」のイメージがまだまだ強いご時世です。
息は生まれてから死ぬまで、共にあります。その息(呼吸)への関心をぜひ深めてみてください。
そして、ヨーガの実習では、必ずアーサナ(坐法)、プラーナーヤーマ(調息)、瞑想(禅定)を行います。
アーサナから、少しずつプラーナーヤーマへの興味を深めて、実習を続けてみてください。継続すると着実に、その効果は実感できていくでしょう。
呼吸の繊細さ、微細さ、微妙な変化を感じ取れるようになっていくと、日常での自分の感情に気付き、コントロールしていくことにも繋がります。
ストレスを感じている時、必ずそれは、身体の側面、呼吸の側面、心の側面に現れています。自分の変化や、違和感にいち早く気付くことで対処ができます。
毎日のプラーナーヤーマで、自律神経系を整え、感覚を研ぎ澄ましていきましょう!